2022/7/5「スープとイデオロギー」

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大阪在住の在日コリアンの一家に焦点を当てた作品。一人暮らしで認知症を患い記憶を無くしていくオモニ(母)との記録を、娘のヤンヨンヒ監督がカメラに収め続けたドキュメンタリー映画

オモニには韓国現代史のタブーである「済州4・3事件」を生き延びた凄絶な過去があった。事件当日の詳細や、娘の結婚相手で日本人の男性との交流、幼い頃北朝鮮へ渡り生き別れとなった三人の息子達への郷愁など、娘との対話を通して本人の口から語られる。

 アルツハイマー病を患ったオモニが、北朝鮮にいる息子達や亡くなった夫が自宅にいるものだと思い込んだり、娘や婿の顔を忘れ、段々と会話か噛み合わなくなっていく様子が切なく感じられる。 

 また、娘が若い頃は、日本人男性との結婚には絶対に反対であったオモニが、婿養子であるカオルさんに韓国の郷土料理を振る舞い、手厚くもてなす様子が描かれる。娘の幸福を第一に願う親心からであろうかと思った。